なぜ冷たい飲み物の入ったコップに水滴がつくのか？身近な結露の科学
冷たいコップの「汗」、その正体は何でしょうか？
暑い日に、キンと冷えた飲み物をグラスに注ぐと、あっという間にグラスの表面が濡れて水滴がたくさんついてきます。まるでグラスが汗をかいているように見えます。この現象は誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
この水滴を見て、「あれ？ グラスの中から飲み物が染み出してきたのかな？」と思ったことはありませんか？ しかし、ガラスやプラスチックのコップは通常、液体を通しません。では、この水滴は一体どこから現れたのでしょうか？
水滴の起源はコップの中ではなく、周囲の空気です
実は、コップの外側につく水滴は、コップの中の飲み物が染み出してきたわけではありません。その正体は、コップを取り巻く「空気中にあるもの」が変化したものです。
空気は、酸素や窒素といった様々な気体の集まりですが、実は目には見えない「水蒸気」も常に含まれています。洗濯物が乾いたり、地面の水たまりが消えたりするのは、水が蒸発して水蒸気となって空気中に溶け込んでいるからです。この空気中の水蒸気が、冷たいコップの表面で冷やされることで、液体の水へと変化するのです。
空気と水蒸気の関係性：温度がカギを握る
空気中に含まれる水蒸気の量は、温度によって限界があります。暖かい空気はより多くの水蒸気を含むことができますが、冷たい空気は少ししか水蒸気を含むことができません。
空気がある温度で最大限に水蒸気を含んでいる状態を「飽和している」と呼びます。そして、その含まれている水蒸気の量を変えずに空気の温度を下げていくと、やがて飽和状態に達します。さらに温度を下げると、空気は余分な水蒸気を含みきれなくなり、その余分な水蒸気が液体の水となって出てきます。
この現象を「凝結（ぎょうけつ）」と呼びます。そして、固体や物体の表面で空気中の水蒸気が凝結して水滴となる現象を、私たちは一般的に「結露（けつろ）」と呼んでいます。
冷たいコップと結露のメカニズム
冷たい飲み物を入れたコップの周りでは、コップによって周囲の空気が冷やされます。コップに触れている、あるいはごく近くにある空気は、その温度が急激に下がります。
この冷やされた空気は、先ほどご説明したように、暖かい時と同じ量の水蒸気を含んでいられなくなります。すると、含まれていた水蒸気の一部が液体の水へと変化し、それがコップの冷たい表面に水滴として現れるのです。これが、冷たいコップが「汗をかく」ように見える結露のメカニズムです。
身近にある結露の他の例
結露は、冷たいコップ以外にも私たちの身近なところにたくさん見られます。
- 冬の窓ガラス: 部屋の中の暖かく湿った空気が、外気で冷やされた窓ガラスに触れて冷やされ、水滴がつきます。
- お風呂場の鏡: 熱いシャワーを浴びると、空気中の水蒸気が増え、冷たい鏡の表面で結露します。
- 冷たいペットボトル: 冷蔵庫から出したペットボトルも、コップと同様に周囲の空気を冷やし、表面に水滴がつきます。
これらの現象も、すべて空気中の水蒸気が冷やされて液体になる、同じ結露という現象なのです。
まとめ
冷たい飲み物のコップにつく水滴は、コップの中身ではなく、空気中の水蒸気が冷やされて水に戻る「結露」という自然現象です。空気の温度によって水蒸気を含む量が変化するという物理的な性質によって引き起こされます。
私たちの周りには、このように「なぜ？」と思うような身近な現象がたくさんあります。少し立ち止まって考えてみると、そこには必ずと言って良いほど科学の原理が隠されています。結露もその一つであり、空気中の水蒸気や温度といった、普段意識しないものの存在を感じさせてくれる面白い現象と言えるでしょう。