なぜ飛行機雲ができるのか?空に残る白い線のフシギ
私たちの頭上高く、飛行機が青い空を横切っていくとき、その後に長く白い線が残ることがあります。これが飛行機雲です。しばらくすると消えてしまうこともあれば、いつまでも空に残っていることもあります。あの白い線は一体何なのか、なぜできるのでしょうか。今回は、飛行機雲ができる科学的なフシギについて解説します。
飛行機雲の正体は何でしょうか?
飛行機雲の正体は、飛行機のエンジンから排出されるものと、上空の非常に冷たい空気が組み合わさってできる氷の粒です。
飛行機のジェットエンジンからは、燃料が燃焼した後に、二酸化炭素や水蒸気、そして微量のすす(煤)などが排出されます。この中で、飛行機雲の生成に大きく関わるのが水蒸気とすすです。
なぜ水蒸気が氷の粒になるのでしょうか?
ポイントは、飛行機が飛んでいる上空の環境にあります。旅客機が巡航する高度、たとえば1万メートル(約3万3000フィート)くらいの場所は、地上の感覚とは全く異なる世界です。気温は非常に低く、マイナス40度からマイナス60度にもなります。
ジェットエンジンから排出された約400度という高温の水蒸気は、この極めて冷たい外気に触れると、一気に冷やされます。すると、気体である水蒸気は、液体の水になる過程を経ずに、直接小さな氷の粒へと変化します。この現象を昇華(または凝華)と言います。
このとき、排出ガスに含まれるすすなどの微粒子が、「凝結核」と呼ばれる役割を果たします。空気中の水蒸気が液体や固体に変わる際に、核となる微粒子があることで、変化が促進されるのです。まるで、冷たい窓ガラスに息を吹きかけると白くなるように、上空の冷たい空気の中で飛行機の排ガスに含まれる水蒸気が急速に冷やされ、凝結核の助けも借りて氷の粒となり、白い線として見えるのが飛行機雲です。
飛行機雲がすぐ消える場合と長く残る場合の違い
飛行機雲ができた後、すぐに消えてしまったり、なかなか消えずに広がっていったりするのはなぜでしょうか。これは、飛行機が飛んでいる上空の空気の湿度によって決まります。
- すぐに消える場合: 上空の空気が乾燥しているときです。排出された水蒸気が氷の粒になっても、周りの空気が乾燥していると、その氷の粒はすぐに再び水蒸気に戻って(昇華して)見えなくなってしまいます。
- 長く残る場合: 上空の空気が湿っているときです。できた氷の粒が昇華しにくく、そのままの状態を保ちます。さらに、周りの空気中の水蒸気を集めて、氷の粒が少しずつ成長することもあります。こうしてできた飛行機雲は、風に流されながら数時間も空に残ることがあります。
天気予報で「上空に湿った空気がある」といった情報が出るときは、飛行機雲ができやすく、消えにくい傾向にあります。飛行機雲が長く残っているのを見かけたら、「今日は上空の湿度が高いのかな」と考えてみるのも面白いかもしれません。
身近な現象とのつながり
飛行機雲ができる仕組みは、冬の寒い日に息が白くなる現象によく似ています。肺から排出される温かく湿った息が、冷たい外気に触れることで含まれる水蒸気が小さな水の粒や氷の粒になり、白く見えるのです。上空の極低温環境と、地上での冬の寒さを比較すれば、同じ原理が働いていることが理解できます。
飛行機雲は、高度な技術によって空を飛ぶ飛行機と、地球の大気が作り出す自然現象が組み合わさって生まれる、私たちの身近なフシギの一つと言えるでしょう。次に空を見上げて白い線を見つけたら、それがどのようにしてできたのか、少しだけ科学に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。