なぜ雷はピカッと光ってからゴロゴロ鳴るのか？光速と音速のフシギ
雷の光と音、なぜ時間差があるのでしょうか？
夏の夕立など、激しい雷雨に遭遇した経験は誰にでもあるかもしれません。空が光ったと思うと、少し遅れてゴロゴロと大きな音が響く。この「光ってから音がくる」という時間差は、子供の頃から不思議に感じていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
雷が発生する瞬間、空では非常に強い放電が起こります。この放電は、強烈な光（雷光）と同時に、周囲の空気を急激に加熱・膨張させ、その衝撃波として大きな音（雷鳴）を発生させています。つまり、光と音はほぼ同時に発生しているのです。
では、なぜ私たちは光を見てから、少し遅れて音を聞くことになるのでしょうか？ その鍵を握るのは、「速さ」の違いです。
光と音、伝わるスピードが全く違う
光も音も、エネルギーが波として空間を伝わっていく現象です。しかし、その伝わるスピードは驚くほど異なります。
まず、光の速さ。光は非常に速く、真空中では秒速約30万キロメートルという速度で進みます。これは、地球を1秒間に約7周半も回ることができる速さです。空気中でもほぼ同じ速さで伝わります。雷が発生する場所がたとえ数キロメートル離れていても、雷光が私たちの目に届くまでの時間は、ほぼゼロと言ってよいほど短いのです。
次に、音の速さ。音は、空気の振動として伝わります。空気中での音の速さは、温度や湿度によって少し変わりますが、おおよそ秒速340メートル程度です（気温15℃の場合）。これは、光の速さ（秒速30万キロメートル）と比べると、約88万分の1という、非常に遅いスピードです。
速さの違いが時間差を生む
光は発生と同時に瞬時に私たちの目に届きますが、音は秒速340メートルという比較的ゆっくりとした速さで空気中を伝わってきます。この光と音の速度の圧倒的な差こそが、雷の光と音に時間差が生じる根本的な理由なのです。
距離が遠いほど時間差は大きくなる
雷が発生した場所から私たちまでの距離が遠くなるほど、音波が私たちの耳に届くまでに時間がかかります。一方、光は距離に関わらずほぼ瞬時に届きます。
例えば、雷が発生した場所が340メートル先にあったとしましょう。 * 光が届く時間：ほぼ0秒 * 音が届く時間：約1秒（340メートル ÷ 秒速340メートル） この場合、光が見えてから約1秒後に音が聞こえることになります。
もし雷が3400メートル（3.4キロメートル）先にあったとしたらどうでしょうか。 * 光が届く時間：ほぼ0秒 * 音が届く時間：約10秒（3400メートル ÷ 秒速340メートル） このように、雷が発生した場所が遠くなるほど、光を見てから音が聞こえるまでの時間は長くなります。
雷までの距離を測ることもできる
この性質を利用すると、光ってから音が聞こえるまでの時間を数えることで、自分から雷までの大まかな距離を知ることができます。音が秒速約340メートルで伝わることから、光ってから音が聞こえるまでの秒数を「340」で割れば、雷までの距離（メートル）を計算できます。あるいは、3秒でおよそ1キロメートルと覚えておくと、より簡単に概算できます。例えば、光ってから6秒後に音が聞こえたら、雷は約2キロメートル先にいると推測できるわけです。
まとめ
雷の光と音に時間差があるのは、光が圧倒的に速いのに対し、音がはるかに遅いスピードで伝わるためです。光は瞬時に届きますが、音は空気中をゆっくりと伝わるため、発生場所から離れるほど時間差が大きくなります。
普段何気なく見聞きしている雷の現象にも、光と音の伝わる速さという物理の基本的なフシギが隠されています。このように、身近な現象に目を向けると、様々な科学の原理が見えてくることがあります。
この記事を通じて、雷を見たときに少しでも科学的な視点を持っていただけたら嬉しいです。