自然のフシギ図鑑

なぜ星は瞬くのか?大気と光のフシギ

Tags: 星, 瞬き, 大気, 光, 物理

夜空を見上げたとき、遠くで輝く星が、まるで生きているかのようにキラキラと光を揺らがせているのを目にすることがあります。この「星が瞬く」という現象は、多くの人にとって、夜空の美しさを象徴するものかもしれません。しかし、なぜ星は瞬くように見えるのでしょうか?本当に星自体が光を点滅させているのでしょうか?

実は、この瞬きは、遠くにある星そのものの性質によるものではありません。その秘密は、星と私たちの間にある「地球の大気」に隠されています。

地球の大気というベール

地球は、私たちの周りを包む厚い空気の層、つまり大気を持っています。この大気は一様ではなく、場所によって温度や密度がわずかに異なります。また、風などの影響で常にゆらゆらと揺れ動いています。例えるなら、水槽の中の水が、温度差や流れによって絶えず揺れているような状態です。

宇宙空間から地球に届く星の光は、この揺れ動く大気の層を通過して私たちの目に届きます。光が異なる密度の媒体を通過する際には、その進む向きが変わる「屈折」という現象が起こります。大気が常に揺らいでいるため、星から来る光は、大気を通過する際に経路がわずかに絶えず変化することになります。

光の道のりが揺らぐとき

想像してみてください。星から放たれた一本の光の束が、揺れ動く大気の中を通って、あなたの目にまっすぐ向かってきます。しかし、大気の小さな塊が動くたびに、光の進む方向がわずかに曲がります。これは、例えば、ゆらゆらと揺れる水面を通して水底を見たときに、底にあるものが歪んで見えたり、揺らいで見えたりするのと同じ原理です。

星の光は非常に遠いところから来るため、私たちの目にはほとんど点として見えています。この点のような光が、大気の揺らぎによってほんの少しでも経路が変わると、私たちの目に届く光の量が瞬間ごとに増えたり減ったりします。私たちの脳は、この光の量の変化を「瞬き」として認識しているのです。

つまり、星が瞬いて見えるのは、星そのものが点滅しているのではなく、地球の大気が揺らいでいるために、私たちに届く光の量が絶えず変化しているからなのです。

惑星はなぜ瞬かない?

夜空には、瞬く星(恒星)とは別に、ほとんど瞬かない天体があります。それは、金星や火星といった惑星です。なぜ惑星は瞬かないのでしょうか?

その理由は、惑星が恒星に比べて地球に非常に近く、私たちの目には点としてではなく、ある程度の大きさを持った「面」として見えるからです。惑星からの光は、一点からではなく、その表面全体から届きます。

大気の揺らぎによって、惑星の表面からの光の経路もわずかに変化しますが、惑星は面で見えているため、揺らぎによる光の量の変化が、その表面全体で平均化されます。結果として、惑星全体からの光の量としては、瞬間ごとの大きな変化が起こりにくく、瞬いているようには見えないのです。

美しい瞬きは、大気の存在の証

星の瞬きは、遠くの恒星からの光が、地球の大気というフィルターを通して私たちの目に届くことで生じる、美しい自然現象です。この瞬きは、私たちが見ている光が、大気の揺らぎという小さな影響を受けていることの証でもあります。

夜空を見上げ、星が瞬くのを感じるとき、それは単に光が点滅しているのではなく、私たちの足元にある地球の大気が、宇宙からの光と織りなす繊細な物理現象であることを思い出してみてください。それは、私たちを取り巻く世界のフシギを、改めて感じさせてくれる瞬間かもしれません。