自然のフシギ図鑑

なぜ水は丸いしずくになるのか?身近なフシギ、表面張力の科学

Tags: 水, 表面張力, 物理学, 自然現象, 液体の性質

雨粒や水道の蛇口から落ちる水滴、テーブルの上にこぼした小さな水の粒など、水が丸い形をしているのを見たことがあるでしょうか。グラスの縁についた水滴や、蓮の葉の上でコロコロと転がる水玉なども、綺麗な丸い形をしています。

水は器の形に合わせて広がる性質がありますが、なぜこのように独立した水滴になると丸くなろうとするのでしょうか。この身近な現象には、水の持つ興味深い性質である「表面張力」という力が深く関わっています。

水分子の「引力」が作り出す表面張力

私たちの身の回りにある物質は、非常に小さな粒である分子が集まってできています。水も例外ではなく、たくさんの水分子が集まることで液体の水として存在しています。

これらの水分子は、お互いの間に引き合う力を持っています。この分子同士が引き合う力を「凝集力」と呼びます。水の中にある水分子は、周りの全ての方向から他の水分子に均等に引き合われています。ちょうど、綱引きで全員が均等な力で引っ張っているような状態をイメージすると分かりやすいかもしれません。

しかし、水の表面にいる水分子は少し状況が異なります。表面の水分子は、水の内側や横方向には他の水分子がいますが、空気側には水分子がありません。そのため、表面にある水分子は、空気側からの引力がほとんどなく、水の内側にある水分子から強く引き寄せられます。

この、水面の表面にある分子たちが内側へと引き込まれようとする力、あるいは水の表面全体をできるだけ小さくしようとする力が「表面張力」と呼ばれるものです。水がまるで薄い膜を張っているような状態を作り出しています。

表面張力によって水が「丸く」なる理由

水は、この表面張力によって、可能な限り自身の表面積を小さくしようとします。これは、分子間の引力によって、水が最も安定した状態になろうとするためです。水の表面にある分子は、水の中にある分子に比べて他の分子との結びつきが少なく、エネルギーが高い不安定な状態にあります。水は表面積を小さくすることで、表面にある分子の数を減らし、よりエネルギーの低い安定な状態になろうとするのです。

数学的に証明されていますが、同じ体積を持つ様々な形の中で、表面積が最も小さくなるのは「球体」です。そのため、水は表面張力の働きによって、独立した塊になろうとするとき、可能な限り丸い形、つまり球形になろうとするのです。

身近な表面張力の例

表面張力は、水のしずくが丸くなること以外にも、私たちの身近な様々な現象で見られます。

このように、水のしずくが丸くなる現象は、水分子同士の引力が生み出す表面張力という、水の基本的な性質によって起こる物理的なフシギです。次に水滴を見たときには、その小さな丸い形に隠された水の力、表面張力の存在を思い出してみてください。