自然のフシギ図鑑

飛行機に乗ると耳がツーンとするのはなぜ? 気圧の変化と耳のフシギ

Tags: 物理, 気圧, 耳, 人体, 生理現象

飛行機に乗ってぐんぐん高度を上げていくと、多くの人が経験するのが「耳がツーンとする」という感覚です。あるいは、飛行機に乗る前に地上で買ったポテトチップスの袋が、上空でパンパンに膨らんでいるのを見たことがあるかもしれません。

これらの現象は、一見すると別々の出来事のように思えますが、実はどちらも同じあるものの変化によって引き起こされています。その「あるもの」とは、「気圧」です。

高度と気圧の関係

まず、気圧とは何でしょうか。私たちの周りには空気が存在し、その空気にも重さがあります。気圧とは、その空気の重さによって地表面にかかる圧力のことです。私たちは普段、この気圧の下で生活していますが、空気は地球全体を分厚く覆っているため、想像以上に大きな力がかかっています。

さて、飛行機が高度を上げていくと、どうなるでしょうか。地表から上空に向かうにつれて、私たちの上に乗っている空気の柱はどんどん短くなります。つまり、空気の量が減り、その重さも軽くなるのです。そのため、高度が高くなるにつれて気圧は低くなります。

例えば、標高の高い山に登った時に気圧が低くなるのと原理は同じです。飛行機は、私たちが普段生活している場所よりもはるかに高い上空を飛びますので、機体の外の気圧は地上の気圧よりもかなり低くなっています。

耳がツーンとするメカニズム

さて、飛行機が上昇して外の気圧が低くなると、なぜ耳がツーンとするのでしょうか。これは、私たちの耳の構造と、気圧の変化に対する体の反応に関係しています。

私たちの耳は、大きく分けて外耳、中耳、内耳の3つの部分からできています。音は外耳から入ってきて鼓膜を振動させ、その振動が中耳の耳小骨を経て内耳に伝わり、脳で音として認識されます。

この時、鼓膜は外耳側の気圧と中耳側の気圧が等しい状態のときに、最も効率よく振動できます。通常、中耳は「耳管」という細い管で鼻の奥(咽頭)と繋がっており、この耳管を通して中耳の気圧が外の気圧と同じになるように調整されています。

地上にいるときは、外耳(体の外の空気)の気圧と中耳の気圧は耳管を通して常にほぼ同じに保たれています。しかし、飛行機が急激に上昇すると、機内の気圧は地上ほど急ではありませんが徐々に下がっていきます。一方で、中耳の気圧は耳管が閉まっていると、地上の高い気圧のまま取り残されてしまいます。

こうなると、鼓膜の外側(気圧が低い)と内側(気圧が高い)で圧力差が生じます。鼓膜は高い気圧の方から低い気圧の方へと押される形になり、これが鼓膜を内側に歪ませます。この鼓膜の歪みが「ツーン」という不快感や、音がこもって聞こえる感覚を引き起こすのです。ポテトチップスの袋が膨らむのも同じ理由で、袋の中の空気の気圧が外の気圧よりも高くなるために、内側から袋を押し広げる力が発生するからです。

圧力差を解消するには?

この不快感を解消するには、中耳の気圧を外の気圧と同じに調整する必要があります。その役割を果たすのが耳管です。通常、耳管は閉じていますが、つばを飲み込んだり、あくびをしたりする時に一瞬開きます。

耳管が開くと、気圧の低い機内の空気が中耳に入り込み、中耳の内側と外側の気圧差が解消されます。鼓膜の歪みが元に戻ることで、「ツーン」という感覚が消え、耳が「ポンッ」と抜けたように感じることがあります。

飛行機が着陸して高度を下げる時も、これとは逆の圧力差が生じます。今度は外の気圧が高くなるため、中耳の低い気圧との間に差ができます。この時も、つばを飲み込むなどで耳管を開き、中耳に新しい空気を取り込むことで圧力を調整する必要があります。着陸時の方が、一度上がった気圧を戻すのが難しく、耳抜きがうまくいかないと感じやすい人もいます。

まとめ

飛行機に乗った時に耳がツーンとする現象や、ポテチ袋がパンパンになる現象は、飛行機の高度変化に伴う「気圧の低下」が原因です。私たちの体は、耳の奥にある耳管を通して中耳の気圧を調整しようとしますが、急激な変化には追いつかないことがあります。つばを飲み込んだり、あくびをしたり、飴をなめたりすることで耳管を開く手助けをすると、この不快感を和らげることができます。

気圧の変化は、飛行機の中だけでなく、高山に登った時や高速エレベーターに乗った時にも感じられる身近な物理現象です。日常の様々な場面に隠された科学のフシギに目を向けてみると、新しい発見があるかもしれません。