どうしてシャボン玉はカラフルに見えるの?
ゆらゆらと色が変わるシャボン玉のフシギ
公園で、あるいは子供の頃に、シャボン玉を飛ばして遊んだ経験のある方は多いでしょう。丸いシャボン玉がふわりと空を舞い、表面が虹色にきらめき、風に揺れるたびにその色が様々に変化していく様子は、いつ見ても美しいものです。
赤、青、緑、黄色…一体どうして、透明なはずのシャボン玉の膜から、あんなに鮮やかな色が現れるのでしょうか。そして、なぜシャボン玉は、じっと見ていると色が変化したり、弾ける直前には色が消えて透明になったりするのでしょう。
このシャボン玉の色の変化には、「光の干渉」という物理現象が深く関わっています。
シャボン玉の色は「薄い膜」がつくりだす
シャボン玉は、石鹸水を空気で膨らませた、非常に薄い水の膜です。この膜の厚さは、場所によって微妙に異なっており、しかも常に重力や空気の流れによって変化しています。この「非常に薄い膜」であることが、シャボン玉が色を持つための重要な条件となります。
光は波としての性質を持っています。太陽光や電灯の光は、様々な色の光(様々な波長の光)が混ざり合ってできています。例えば、私たちが見る白い光は、赤から紫までの様々な色の光が合わさったものです。
シャボン玉の薄い膜に光が当たると、光の一部は膜の表面で反射し、残りは膜の中を透過して裏面で再び反射します。つまり、シャボン玉の膜からは、表面で反射した光と、裏面で反射して膜を再び通過してきた光の、二種類の反射光が出てくることになります。
光の波が重なり合う「干渉」
シャボン玉の表面と裏面で反射した二つの光は、私たちの目に届くまでに少しだけ進む距離が異なります。この距離の違い(光路差)は、シャボン玉の膜の厚さによって決まります。
波の性質を持つ光は、波長(特定の色を決める光の波の間隔)と比べて無視できないほど薄い膜を通過する際に、この光路差のために、二つの反射光の波の「山」と「山」、「谷」と「谷」が重なり合って互いに強め合ったり、「山」と「谷」が重なり合って互いに弱め合ったりする現象を起こします。これが「光の干渉」です。
シャボン玉の膜の厚さによって、特定の色の光(特定の波長)の波が強め合うように干渉したり、逆に弱め合うように干渉したりします。強め合って勢いを増した色の光だけが私たちの目に強く届き、その色が鮮やかに見えるのです。
例えば、ある厚さの場所では青い光が強め合い、赤い光が弱め合うかもしれません。すると、その場所は青く見えます。膜の厚さが少し変わると、今度は緑の光が強め合って赤と青が弱め合う、といった具合に、強め合う光の色が変わるため、シャボン玉の色が変化して見えるのです。
シャボン玉が動いたり、重力で膜が垂れ下がったりすると、膜の厚さが常に変化するため、それに伴って強め合う光の色も変わり、シャボン玉の表面の色がめまぐるしく移り変わるように見えるのです。
膜が薄くなると色が消える理由
シャボン玉が弾ける直前には、重力によって膜の下の方に水分が集まり、上の方が極端に薄くなります。膜の厚さが光の波長よりもずっと薄くなると、先ほどの光路差がほとんどなくなってしまい、特定の色の光だけが強く干渉して見えるという現象が起こらなくなります。結果として、反射光は弱くなり、膜は透明に近づいて見えなくなります。そして、膜が完全に薄くなった時に、シャボン玉は弾けて消えるのです。
身近な光のフシギ
シャボン玉の色だけでなく、水面にできた油膜や、CDやDVDの記録面が虹色に見える現象も、この薄膜による光の干渉と同じ原理で説明できます。
何気なく見ているシャボン玉の美しい色の変化は、実は光の波の性質と、ごく薄い膜が生み出す物理現象なのです。身近な現象の中に、このような科学のフシギが隠されていることを知ると、世界が少し違って見えてくるのではないでしょうか。