なぜ冬は静電気が起こりやすい?身近な電気のフシギ
冬の乾燥した時期、ドアノブに触れたときや、服を脱ぐときに「パチッ」とくる不快な体験をしたことがある方は多いでしょう。セーターやブランケットが体にまとわりついたり、髪の毛が逆立ったりすることもあります。これらはすべて「静電気」によるものです。
身近な現象、静電気とは?
静電気とは、物体の中に電気(電荷)がたまった状態のことを指します。私たちの身の回りにあるあらゆるものは、プラスの電気を持つ陽子と、マイナスの電気を持つ電子という小さな粒からできています。通常、物体はプラスとマイナスの電気の量が同じで、電気的に安定した「中性」の状態にあります。
しかし、異なる物体同士をこすり合わせたり、接触させたりすると、この電気のバランスが崩れることがあります。例えば、衣服と体がこすれる、靴下が床とこすれる、といった摩擦によって、一方の物体からもう一方の物体へ電子が移動することがあるのです。電子を受け取った方はマイナスの電気を多く帯び、電子を失った方は相対的にプラスの電気を多く帯びることになります。このようにして、物体が電気を帯びた状態を「帯電」と呼び、この帯電したまま動かない電気を「静電気」と言います。
プラスに帯電した物体とマイナスに帯電した物体が近づくと、互いに引き付け合います。また、どちらかが帯電していて、もう一方が中性の場合でも、電気的な影響を及ぼし合います。そして、十分に電荷がたまった状態で、電気を通しやすいもの(例えば金属製のドアノブや、他の人の体など)に触れると、たまった電気が一気に流れ出す現象が起こります。これが、私たちが「パチッ」と感じる「放電」です。
なぜ冬に静電気が起こりやすいのか?
さて、静電気は一年中起こりうる現象ですが、特に冬に悩まされることが多いのはなぜでしょうか。その鍵は「湿度」にあります。
実は、空気中の水分(湿気)は、たまった静電気を地面や他の物体に逃がすという大切な役割を担っています。空気中の水分は電気を通しやすい性質があり、帯電した物体の表面に薄い水の膜を作ったり、空気中の水分子が電気の通り道になったりして、電荷を少しずつ逃がしてくれているのです。
ところが、冬は空気が乾燥しています。湿度が低いと、空気中の水分による「電気の逃げ道」が少なくなります。その結果、摩擦などで物体にたまった静電気が逃げ場を失い、どんどん蓄積されてしまいます。十分に電荷がたまった状態で、金属などに触れると、溜まりに溜まった電気が一度に放電されるため、「パチッ」という強い刺激となって感じられるのです。
夏場は湿度が高いため、発生した静電気が空気中の水分を通じてすぐに逃げてしまい、帯電した状態が長く続かないため、静電気を感じる機会が少なくなるというわけです。
静電気を防ぐには?
冬の静電気対策としては、加湿器などで部屋の湿度を上げたり、静電気をため込みにくい素材の服を選んだりすることが効果的です。また、ドアノブに触る前に壁や木製の家具など、電気を通しにくいものに一度触れて、ゆっくりと電気を逃がしてあげるのも有効な方法です。
まとめ
冬に静電気が起こりやすいのは、空気が乾燥しているために、発生した静電気が空気中の水分を通じて逃げにくくなり、物体に電荷がたまりやすくなるためです。私たちの日常生活の中にある「パチッ」という現象も、電気という目に見えないものの働きと、空気中の水分の状態が深く関わっている、身近な科学の一つなのです。日々のふとした疑問の中に、自然のフシギや科学の原理が隠されていることに気づくと、日常が少し面白く感じられるかもしれません。