自然のフシギ図鑑

なぜ黒い服は太陽の下で暑いのか?光の吸収と熱のフシギ

Tags: 光, 色, 熱, 吸収, 反射, 物理

なぜ黒い服は太陽の下で暑く感じるのか

夏の暑い日に外を歩くとき、白い服と黒い服では、黒い服の方が暑く感じる経験は多くの方がお持ちではないでしょうか。同じ素材、同じ形なのに、なぜ色によってこれほど体感温度が違うのでしょうか。この身近な疑問には、光の性質が深く関わっています。

色はどのようにして見えるのか

私たちが物体の色を見ることができるのは、物体に当たった光がどのように扱われるかによります。太陽の光や電灯の光(これらをまとめて「白色光」と呼びます)は、実は様々な色の光が混ざり合ってできています。プリズムを通すと光が虹色に分かれる現象を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。あの虹の色は、それぞれ異なる「波長(はちょう)」を持つ光です。

物体に白色光が当たると、その物体を構成する物質の性質によって、特定の波長の光が「吸収(きゅうしゅう)」されたり、「反射(はんしゃ)」されたりします。そして、物体が反射した光の色を、私たちはその物体の色として認識するのです。

例えば、葉っぱが緑色に見えるのは、葉っぱが緑色の光を強く反射し、それ以外の色の光(主に赤や青)を吸収するからです。赤いリンゴが赤く見えるのは、リンゴが赤い光を反射し、それ以外の光を吸収するからです。

黒と白は何が違うのか?

それでは、黒い物体と白い物体はどうでしょうか。

黒い物体は、目に見えるほとんど全ての波長の光を吸収します。どの色の光もあまり反射しないため、私たちの目には色がついていない、つまり黒く見えるのです。

一方、白い物体は、目に見えるほとんど全ての波長の光を反射します。当たった光をそのまま跳ね返すため、私たちの目には全ての色の光が混ざった色、つまり白く見えるのです。

光が熱に変わる仕組み

さて、色の違いが分かったところで、本題の「暑さ」の話に移りましょう。

物体が光を吸収すると、その光のエネルギーは熱のエネルギーに変わります。太陽の光には、目に見える光だけでなく、熱を感じさせる「赤外線」などの目に見えない光も含まれていますが、ここでは主に目に見える光(可視光線)の吸収が熱に変わる仕組みに焦点を当てます。

黒い服が太陽の光をたくさん吸収するということは、それだけ多くの光のエネルギーを受け取り、それを熱に変えているということです。吸収された熱は服の温度を上昇させ、それが肌に伝わるため、暑く感じるのです。

対照的に、白い服は太陽の光をほとんど反射してしまうため、光のエネルギーをあまり吸収しません。熱に変わるエネルギーが少ないため、服自体の温度があまり上がらず、涼しく感じるわけです。

身近な現象にも光の吸収・反射が

この光の吸収・反射による色の違いと温度の関係は、私たちの身近な様々な場面で見られます。

このように、色が光をどのように吸収・反射するかという物理現象が、私たちの体感温度や物体の状態に影響を与えているのです。

まとめ

黒い服が太陽の下で暑く感じるのは、服の色が光の吸収と反射の性質によって決まり、黒い物体は多くの光エネルギーを吸収して熱に変えるからです。白い服はその逆で、光を多く反射するため熱くなりにくい性質を持っています。

普段何気なく選んでいる服の色にも、このような科学的な理由があることを知ると、少し面白いのではないでしょうか。身の回りの「なぜ?」を科学の視点で見つめ直してみると、新たな発見があるかもしれません。