なぜ熱くないのに煙が出るのか?ドライアイスのフシギ
熱くないのに白いモクモク? ドライアイスの正体とは
アイスクリームの持ち運びや、イベントの演出などでよく見かけるドライアイス。冷たいのに、水のように溶けるのではなく、白いモクモクとした「煙」を出しているように見えます。この不思議な現象は、いったいなぜ起こるのでしょうか。
ドライアイスは「氷」じゃない?
まず、ドライアイスが何でできているのかを知ることが大切です。通常の氷は「水」が凍ったものですが、ドライアイスは「二酸化炭素」という気体が固体になったものです。私たちが息を吐くときに出る気体と同じ成分が、非常に低い温度で固体になったものがドライアイスなのです。
固体から直接気体へ!「昇華」のフシギ
通常の物質は、温度が上がると固体から液体になり、さらに温度が上がると液体から気体へと変化します。しかし、ドライアイス(固体の二酸化炭素)は、常圧(私たちが普段生活している気圧)では、温度が上がっても液体にはならず、直接気体(二酸化炭素ガス)に変化します。この、固体が液体を経由せずに直接気体になる現象を「昇華(しょうか)」と呼びます。
ドライアイスの温度は約マイナス78.5度と非常に低いため、外気に触れると周りから熱を吸収し、どんどん昇華して二酸化炭素ガスに戻っていきます。だから、水のように溶けて濡れることなく、いつの間にか消えてなくなってしまうのです。
白い「煙」の正体は二酸化炭素ガスではない
では、ドライアイスから出る白いモクモクとしたものは何でしょうか? ドライアイスが昇華してできるのは無色透明の二酸化炭素ガスですが、私たちが見ている白い「煙」は、実は二酸化炭素ガスそのものではありません。
ドライアイスの周りの空気は、昇華する二酸化炭素ガスによって急激に冷やされます。空気中には目に見えない水蒸気が含まれていますが、この水蒸気が冷やされることで、小さな水の粒(液体)や氷の粒(固体)になります。これは、お風呂の湯気や、冬の寒い日に息が白くなる現象と同じ原理です。つまり、ドライアイスから出る白いモクモクは、冷やされた空気中の水蒸気が凝結してできた「小さな水滴や氷の粒の集まり」なのです。
昇華した二酸化炭素ガスは、この白い水滴や氷の粒と一緒に空気中に広がっていきます。そのため、私たちは白い煙が出ているように見えるのです。
日常にある昇華の例
昇華はドライアイス以外にも身近なところで起こっています。例えば、洋服ダンスに入れる防虫剤(パラジクロロベンゼンやナフタレン)も、固体から直接気体になって少しずつ小さくなっていきます。これも昇華の一例です。
まとめ
ドライアイスが熱くないのに白いモクモクを出すのは、固体から直接気体になる「昇華」という現象と、その際に周りの空気が冷やされて空気中の水蒸気が小さな水滴や氷の粒になるためです。身近なドライアイスには、物質の状態変化の面白い科学が隠されているのですね。