自然のフシギ図鑑

なぜ冷凍庫に霜がつくのか?どんどん増える霜のフシギ

Tags: 物理, 化学, 状態変化, 霜, 冷凍庫

冷凍庫を開けた時に、壁や食品に付着した真っ白な霜を見たことがある方は多いでしょう。初めはうっすらとついていた霜も、しばらくすると厚みを増してカチカチになり、邪魔に感じた経験があるかもしれません。この霜は一体どのようにしてできるのでしょうか。そして、なぜ放っておくとどんどん増えてしまうのでしょうか。身近な冷凍庫の霜に隠された科学のフシギを探ってみましょう。

霜の正体は何?

冷凍庫の霜は、空気中に含まれる水蒸気が冷やされて氷になったものです。私たちは普段、空気は無色透明だと感じていますが、実際には目に見えない水蒸気が含まれています。特に、湿度が高い場所や、温かい場所の空気には、たくさんの水蒸気が含まれています。

この水蒸気が、冷凍庫の非常に冷たい(通常マイナス18度以下)壁や食品などの表面に触れると、急激に温度が奪われます。水蒸気は気体の状態ですが、この時、液体の水を経由せずに直接固体の氷へと変化します。この、気体が直接固体になる現象を昇華(しょうか)と呼びます。ドライアイスが煙(二酸化炭素ガス)になるのも昇華の一種ですが、冷凍庫の霜は水蒸気が昇華して氷になる現象です。

このようにして、空気中のわずかな水蒸気が冷凍庫内の冷たい表面で昇華し、小さな氷の結晶として付着したものが霜なのです。

なぜ霜はどんどん増えるのか?

さて、冷凍庫に一度霜ができると、なぜ放っておくとどんどん増えてしまうのでしょうか。その主な原因は、冷凍庫の扉の開閉にあります。

冷凍庫の扉を開けると、外の比較的温かく湿った空気が庫内に入り込みます。外の空気には、庫内の空気よりもはるかに多くの水蒸気が含まれています。この外気が庫内の冷たい空気に触れると、含まれていた水蒸気が冷やされ、すでに存在している霜や冷凍庫の壁などの冷たい表面に触れて昇華し、新たな氷の結晶として付着します。

つまり、扉を開けるたびに、外から新しい水蒸気が供給され、それが庫内の冷たい場所で霜となって積み重なっていくのです。扉の開閉の頻度が高かったり、扉がしっかりと閉まっていなかったりすると、それだけ多くの湿った空気が入り込むため、霜がつく速度は速くなります。

霜が増えると困ることは?

冷凍庫に霜が増えることは、単に見た目が気になるというだけでなく、いくつかの問題を引き起こします。

まず、霜は断熱材のような働きをします。冷凍庫の壁に厚い霜が付着すると、冷凍庫の外側と内側の間の熱の出入りを妨げる効果が出てしまいます。これは一見良いことのように思えますが、庫内の冷却装置が冷やそうとする「空間」と、実際に冷やしたい食品との間に霜の層ができてしまうため、効率的に冷気を食品に伝えられなくなります。結果として、食品をしっかり冷やすためにより多くの電力が必要になったり、設定温度になっていても十分に冷えていないという事態になったりすることがあります。

また、霜が食品のパッケージなどに付着したり、庫内の空間を圧迫したりすることで、食品の収納スペースが減少します。さらに、霜が冷凍庫の部品にまで達すると、故障の原因となる可能性もあります。

まとめ

冷凍庫の霜は、空気中の水蒸気が冷凍庫内の冷たい表面で直接氷になる「昇華」という現象によって生まれます。そして、扉の開閉によって庫内に入り込む外の湿った空気が、この霜をどんどん成長させていきます。

身近な冷凍庫の霜も、空気中の水蒸気や物質の状態変化といった科学の基本的な原理に基づいた現象です。普段何気なく目にしている現象の裏側には、様々な科学のフシギが隠されているのですね。