自然のフシギ図鑑

空が青いのはなぜ?身近な現象に潜む光の科学

Tags: 空, 光の散乱, レイリー散乱, 大気光学, 物理現象, 身近な科学

空の青さはどこから来るのでしょうか?

晴れた日の昼間、空を見上げると、私たちの頭上には広大な青色が広がっています。この「空は青い」ということは、あまりにも当たり前の日常風景です。しかし、改めて考えてみると、太陽から届く光は無色透明に見えるのに、なぜ空は青く見えるのでしょうか。この身近な疑問には、光と私たちの地球の大気が織りなす、興味深い科学的な理由が隠されています。

太陽の光と大気の働き

空が青く見える秘密を解き明かす鍵は、太陽から地球に届く「光」と、地球を包む「大気」にあります。

まず、太陽の光について考えてみましょう。太陽から届く光は、実際には様々な色の光が混ざり合ってできています。虹を思い浮かべていただくと分かりやすいかもしれません。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫といった様々な色の光が混ざり合うと、私たちはそれを「白色光」として認識します。それぞれの色の光は、「波長」という、波の山から山までの距離で区別することができます。例えば、赤い光は波長が長く、紫や青い光は波長が短いという性質を持っています。

次に、地球の大気です。大気は、窒素や酸素といった気体分子が主成分ですが、他にもチリや水蒸気など、様々な粒子が漂っています。太陽から届いた光は、この大気の中を通過して地上に届きます。その途中、光は大気中の気体分子や粒子にぶつかります。

光が「散乱」するということ

光が大気中の分子や粒子にぶつかると、光の進行方向が変わることがあります。この現象を「散乱」と呼びます。例えるなら、勢いよく飛んできたボールが、壁や障害物にぶつかって予期せぬ方向に跳ね返るようなものです。

ここで重要なのは、光の散乱の仕方が、光の色(波長)やぶつかる分子・粒子のサイズによって異なるという点です。地球の大気の主成分である窒素分子や酸素分子は、光の波長と比べて非常に小さいサイズです。このような小さな分子によって光が散乱される場合、「レイリー散乱」と呼ばれる散乱が起こります。

レイリー散乱の大きな特徴は、波長の短い光ほど強く散乱されやすいということです。先ほど述べたように、太陽光に含まれる色のうち、青や紫といった色は波長が短く、赤や橙といった色は波長が長い光です。したがって、大気中の分子にぶつかったとき、波長の短い青い光は、波長の長い赤い光に比べてはるかに強く散乱されるのです。

青い光が私たちの目に届くから

地上にいる私たちが空を見上げると、太陽から直接届く光だけでなく、大気中で散乱された光も同時に目にすることになります。昼間、太陽が比較的高く昇っているとき、太陽光は大気を通過する距離が比較的短くなります。このとき、波長の短い青い光は、大気中の分子によってあらゆる方向に強く散乱されます。その結果、空全体から、強く散乱された青い光が私たちの目にたくさん飛び込んできます。

一方、波長の長い赤い光は、青い光ほど強く散乱されません。そのため、赤い光の多くは散乱されずにそのまま直進し、私たちの目には直接届かない方向へ進むか、散乱されてもその量が少ないため、青い光ほど目立ちません。

このように、大気中で青い光が強く散乱され、その散乱された青い光が空全体から私たちの目に届くために、私たちは昼間の空を青く見ているのです。

その他の空の色も科学で説明できる

空の色は、時間帯や気象条件によって様々に変化します。例えば、夕焼けが赤く見えるのも、空が青く見えるのと同じ光の散乱の原理で説明できます。夕方、太陽が地平線に近づくと、太陽光は大気を通過する距離が長くなります。長い距離を通過する間に、波長の短い青い光はほとんど散乱されてしまい、私たちの目に届きにくくなります。一方、波長の長い赤い光や橙色の光は散乱されにくいため、大気を通過して私たちの目に届きやすくなります。その結果、空は赤や橙色に染まって見えるのです。

また、雲が白く見えるのは、雲を構成する水滴や氷の粒が、光の波長よりも十分に大きいためです。このような大きな粒子による散乱(ミー散乱などと呼ばれます)は、光の波長による影響を受けにくく、様々な色の光をほぼ均等に散乱させます。そのため、太陽光の白色がそのまま保たれて、雲は白く見えるのです。

まとめ

昼間の空が青く見えるのは、「太陽光には様々な色の光が含まれていること」と、「大気中の分子が波長の短い青い光を強く散乱させる(レイリー散乱)こと」が原因です。大気中で散乱された青い光が空全体から私たちの目に届くことで、私たちは空を青く感じています。

普段何気なく見上げている空の色一つにも、光の性質と大気の働きという物理学的な原理が深く関わっています。このように、私たちの身の回りの当たり前の現象の中にも、自然のフシギや科学の面白さがたくさん隠されているのです。